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執筆者の写真中央大学新聞

オープンから3ヶ月 中央大学資料館 設立の経緯と思いを聞く

 今年の4月、中央大学炎の塔に「法と正義の資料館」そして「大学史資料館」が二館同時にオープンした。

 今回は二つの資料館へ取材を行い、設立に至るまでの経緯と、それにかける思いに迫った。取材に協力していただいたのは、「大学史資料館」設立に深く関わった、文学部日本史学専攻教授の宮間純一先生と、資料館事務室の事務長である秋葉孝喜さん、学芸員の岩立将史さんの3名である。なお、当記事では資料館の概要については取り上げない。もし興味を抱いていただけたならば、大学HPを確認してもらえれば幸いである。聞き手:板谷・亀田


 

設立までの経緯と思い


 「中央大学について、学内の人にも学外の人にも知ってほしかったんですよね。」そう語るのは宮間純一先生だ。彼が学生だった時代は当然資料館などなく、大学史について知る機会がなかった。そのことを残念に思い、中央大学の年史編さんの過程で収集している資料を、在学生やOBOGなどに向けて公開したいと思ったそうだ。そんな時、法学部が茗荷谷キャンパスへと移転し、そのためのスペースができたのである。設置が決定してからは急ピッチで作業を進め、もともと自習室であった部屋を、約半年という短い期間でこの資料館へと作り替えたという。設立にあたってはやりながら考えることの連続であったそうだが、もちろん、積極的に動いていたのは彼だけではない。学内の多くの先生や、事務室の方々が展示解説文の寄稿などの様々な形で開設に尽力している。この資料館開設事業自体が、長年待望されていたことでもあり、今回の資料館はまさにその願いが実現した形となった。


 そんなこの資料館だが、宮間先生にはこの資料館に対して、もう一つ強い思いがあるという。それは、この中央大学の歴史を「正負」両面から見てほしいということだ。「大学史資料館」と言っても、ここには単に大学の「正」の側面だけが展示されているわけではない。軍国主義時代の学徒出陣や、戦後の学生闘争に関連した展示、すなわち困難な時代の展示もなされているのだ。歴史は正の側面だけでは語れない。物事には必ず負の側面もあり、両面とも見なければ、それに対して真に理解することはできないだろう。そして両面とも見たうえで、自ら「検証」することが重要なことである。


 「この大学の歴史の正も負も知って、思い、色々と考えてほしい。」そんな思いを込めて設立されたこの資料館、ぜひ足を踏み入れてみてほしい。


大学史資料館の展示風景

特に見てもらいたい展示


 展示品の目玉を宮間先生に伺うと、「駿河台校舎の教室」を挙げてくれた。展示されている教壇や机、椅子、ゴミ箱は実際に使用されていたもので、机には当時の落書きを見ることができる。パネルには授業を受ける夜間学部の学生の姿があり、当時の様子をありありと感じられるような構成となっている。また、「ナイトハイク」と呼ばれる今はなき行事に関する展示や、学生運動の記録も面白いのではないかと語った。過去にこういうことがあったんだ、と知ってもらうことが大切なのだという。



反響について


 オープンしてからの反響を、資料館事務室の秋葉さんと岩立さんに伺った。

 「沢山の方々から肯定的な意見をいただいております。」事務長の秋葉さんは笑顔で答えた。OBOGの方からは「なつかしい」といった声が多い一方で、学生からは「展示を増やしてほしい」「こういう企画展がみたい」等の提案も受けているという。他大学の博物館・資料館職員からは、二館同時オープンの珍しさについての声も多く、「法と正義の資料館が企画できたのは法学に強い中大だからこそ」といった意見をいただいたそうだ。朝日新聞を始めメディアに紹介していただく機会もあり、開館当初、特に入学式の日には約300名の来場があったそうだ。

 

 

今後の課題と予定


 3名が共通して語ったのは、「より多くの人に利用してもらえる資料館にしていきたい」という思いであった。現状資料館を利用したプログラムは用意されていないものの、宮間先生は「各学部の初年次教育に取り入れてほしい」と考えているそうだ。また現在、学生が展示できるようなスペースが企画中であるらしい。さらに「大学史資料館」に展示されている一部では、今後サークルの歴史についても扱っていく予定であるらしく、当会としても待ち遠しい企画が立案中であるようだ。学びの場としての利用はもちろん、大学を訪れた際の憩いの場としての用途も期待したい。

 

宮間先生イチオシ 「駿河台校舎の教室」

読者に向けて


宮間先生:自分を変えるきっかけとして、資料館を利用してみては如何でしょうか。今こうして中大で研究・学びの自由があるのも、全て大学が歩んできた歴史の上に成り立っています。今一度これらを考えることで、自分が学んでいる場の見方がきっと変わるはずです…!


秋葉さん:一度とは言わず、ぜひ資料館に足を運んでください!大学を身近に感じてほしいという思いで、私たちは資料館と企画展を日々運営しています。中央大学をより好きになってもらうためにも、訪れていただけると嬉しいです。


岩立さん:オープンして間もないこの資料館を、学生とともに作り上げ、ともに成長させていきたいと思っております。学生参加型の企画も現在計画中です。実現した際には、自分たちの活動をPRする場としてもご活用ください!



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