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  • 執筆者の写真中央大学新聞

祝 真打昇進 林家つる子氏インタビュー

 立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花。そんな言葉がピッタリの落語家・林家つる子氏。落語界では初となる女性の真打抜擢昇進を来春3月に控え、今をときめく彼女の独演会が、11月29日、母校である中央大学にて行われた。その際、限られた時間ではあったものの、彼女が抱く落語への思いや中央大学での思い出など、お話を伺うことが出来た。聞けば、落語と出会ったきっかけは大学のサークル新歓イベントであったという。


林家つる子
快く撮影に応じてくれた林家つる子氏

 落語界の未来を照らす“実力派”、その貴重なインタビュー内容を以下に記す。(聞き手:板谷、亀田)


 

―いきなりで恐縮ですが、声の張り方を教えてください。

 これはもう回数を重ねるしかないですね。何回も高座に上がるうちに、こういう声は後ろのお客さまにも届くんだなっていうのが分かってくるので、話に慣れていくのも含めて、如何に経験を積めるかが一番重要だと思います。それこそ「腹から声を出せ」と言われるぐらいで、発声練習みたいなものはあまりしないんです。私の場合は、高校時代の演劇経験が生きた部分もあるのかなとも思います。



―男性社会の落語界で、“女性であるが故の風当たり”を感じることはありますか?

 やっぱりありますよね。前座で高座に上がる時、明らかに下を向くお客さまとか、相手にされてないなっていう目線を感じることがありました。師匠方によっては、「この噺は女の子にどう教えていいのか分からない」と言われ、稽古を付けてもらえないこともありました。男の噺家だったらこういう経験はしないだろうな、とは思います。



―逆に、“女性だからこその強み”はありますか?

 女性だからこその可能性は無限にあるなと思っていて、男性の師匠方にはできない挑戦ができると思っています。落語って江戸時代や昔のことを描いている噺が多くて、その時は男性の噺家しかいなかったから、やっぱり主人公も男性である場合が多いんだろうと思うんです。だから、落語の良さも史実も守りつつ、その時代にもし女性の噺家がいたらこういう噺があっただろうなっていうものを描いていきたいです!



―女性視点で物語を描くことは苦労されると思うのですが…

 私の場合想像がまず頭の中にあるんですが、そこからどうやって具体的に噺にしていくかっていうのは確かに苦しい作業です。お客さまの反応もうかがいながらの創作なので、怖い挑戦でもあります。でも、批判があったり上手くいかなかったりしても、挑戦してみることが大事だなと思っていて、だってそうしないと何も変わっていかないですよね。失敗した経験は絶対に活かせるし、笑い話にもできるから、もし失敗しても次に活かせてラッキーぐらいに思って取り組んでいます。



―学生時代は中大の落語研究会に所属していたと伺いました。そこでの思い出をお聞かせください。

 本当に数え切れないぐらいのエピソードがあるんですけど、当時の行事の中に“自衛隊合宿”っていうのがあって、これが一番強烈な思い出です(笑)。

 中大落研顧問のプロの噺家で、自衛隊に何年か入らされて修行した経験を持っている桂才賀師匠という方がいて、「誰でも参加できて良い経験にもなるから行ってこい!」という師匠の助言もあり、迷ったんですけど、これを逃したら絶対に経験できないだろうなって思いが強くて参加しました。朝6時に起床して、ラジオ体操して、訓練して、お昼は海軍カレー食べて…みたいな2泊3日で、今でも強烈な思い出です(笑)。



―その経験も芸の糧として活かされていますか?

 どうなんだろう。でも活かされている気がします。他にもなんだか訳わかんないような経験を落研の頃にいっぱいしたんですけど、そのどれもが、芸として、話のネタとなって活かされていますかね(笑)。



―最後に、読者や学生に向けてメッセージをお願いします。

 大学時代は、人生の中でも一番の自由な時期だと思います。だからこそ、“やりたいことには何でも挑戦するべき”です。私の場合、その内の一つが落語でした。

 あとは…落語って多分見たことない、知らない人がほとんどだと思うので、この記事を読んだ皆さん!これをきっかけに是非、寄席に来てください!来年の3月21日から、私の真打昇進披露興行が始まります。寄席で初めてトリをつとめますので、23日間続く披露興行のうち、ぜひその1日だけでも、落語デビューの一歩を踏み出してみてほしいです。


☆真打昇進披露興行日程は林家つる子ホームページから



 終始笑顔を絶やさないポジティブさと、何事にも挑戦していく姿勢がとても印象的であった、落語家・林家つる子氏 。改めて、インタビューありがとうございました。(板谷)

 


―インタビューを終えて―


 インタビューを終え、つる子氏は落語界に新風を起こそうとしていると感じた。落語は男性が語ることを前提として作られている噺も多く、女性の視点から語ることによって、さらに解像度が増す噺も多いと思う。しかし、このような新たな試みがなされる一方で、落語界が抱える問題は多い。その一つが集客である。現在、数多くの娯楽が社会にあふれている。テレビ、ゲーム、ライブ、遊園地…挙げていけばきりがない。その中で、昔の伝統芸能というイメージを持たれがちな落語を見に行こうとする人は、特に若者の間では、少ないだろう。おそらく、「落語って見たことある?」と若者たちに質問したら、ほとんどが「見たことがない」と答えるに違いない。私自身、高校時代にはじめて聞くまでは、落語とは古くさいものだと思っていた。だが、実際聞いてみると全く違った。


 今回つる子氏が披露してくれた「紺屋高尾」。とある染物屋の職人のいちずな恋心を描く人情噺である。恋焦がれる人のために一生懸命頑張るそのひたむきさ、そしてその恋が実った時の天にも昇りそうな気持ち、これらの気持ちはおそらく、誰かと付き合ったことがある人ならば誰しもが味わったことのある感情ではないだろうか。この話に代表されるように、落語は庶民の日々の生活の中での感情の機微を取り上げる芸能である。それを見て思わず笑ったり、涙を誘われてしまったりするということは、人々の感情の動きというものが昔からあまり変わらないことの証であり、落語が決して古臭いものではないという証明である。伝統芸能だからといって肩ひじを張って見に行く必要はない。なぜなら、噺家達によってそこに描かれているのは、時代が少し違うだけで私たちとほとんど変わらない日常であるのだから。


 この記事に興味を持って落語を見てみたいという人は、新宿など都内の数か所に落語を常日頃見られる「寄席」という場所が存在する。ぜひ行ってみてほしい。座布団の上で口調や話し方を使い分け、人々にその噺の情景を想像させる名人たちの芸を通じて、そして何より庶民たちの日常の喜怒哀楽を感じて、笑ってほしい。(亀田)

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