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福原前学長退任直前インタビュー

5月26日、3年の任期満了に伴い、中央大学学長の福原紀彦先生が退任された。

福原先生は、学長の他にも様々な理事や会長を務めるなど、幅広く活躍されている。退任前日に、コロ


ナ禍の対応についてや仕事の姿勢までインタビューを行った。


聞き手:田村恵美(法学部3年)、有滝将史(法学部1年)、矢鋪怜央奈(法学部1年)




 

―在任中に取り組まれたことについて教えてください。



福原 いま、大学を取り巻く環境が大きく変わってきています。この社会の状況を踏まえて、中央大学の良いところをきちんと残して、新しいことに取り組んできました。

 まず、2025年の創立140周年に向けた「中長期事業計画」の前半部分を確実に実行しました。2つの新しい学部が始動し、グローバル館やフォレスト館が完成して利用を始め、ダイバーシティセンター、AI・データサイエンスセンター、アカデミックサポートセンターを造ったりして、新しい時代に中央大学の良さを発揮するためのインフラ作りに努力しました。そして、CHUO Vision2025が今年の4月からちょうど6年目になるので、前半の5年の成果を踏まえて第二期の中長期事業計画を作り上げました。

 これらは今期の学長任期に私に課せられたミッションであったし、このミッションを厳しい状況のときに追求できたことがとても感慨深いです。コロナ禍にあってはできないと思われることでも、むしろ、みんなで一致団結して、DX対応やオンライン対応を進め、その環境整備を通じて、今後の中央大学の発展の道筋を示すことができました。


 コロナへの対応


福原 この1年、これからの5年間を見ながらコロナ対策に注力していましたが、そのときに、やっぱり学生の皆さんがよく頑張ったなと思います。学生の皆さんがオンライン環境に対応して、オンラインで単位を取得する形式に早く慣れてくれたのを嬉しく思っています。特に、今までの学生生活を知っている先輩からしてみると大変だったでしょう。

 

―ガラリと生活が変わりました。


福原 変わったよね、学生生活が。


―友達とも会えなくなって。


福原 コロナがあったからこそ、風景が変わりました。コロナで失ったものはあるけど、私たちには初めて見えたものもあります。人間って失って初めて大切さがわかるってことがあってね。おそらく先輩は、なにげなく友達と一緒に学食で喋っていた楽しさとか、いつでも大学に行けば誰かと話せたという、日常の大切さがわかったのではないかなと思います。



 あなたたちにとっても初めてですけど、私たちにとっても初めてですね。学長室からは、毎日学生の流れが見えます。それが去年の4月から学生の姿が見えない。学生の姿が見えない大学というのを、初めて経験しました。

 そういうなかで、いち早く感染症対策本部をこの学長室に設置し、皆さんの健康と安全を図りながら、進級も卒業も、就職も、そして資格取得もできる環境を整えてきました。皆さんにWebexのホストアカウントを配ってしまおうだとか、オンライン対応のための奨学資金を給付するということも、ここで話し合って決めていましたね。

 私が、「あさイチ」に出ていたのは見ましたか?


―1人暮らしでテレビがないんです。


福原 今の若い子はテレビ見ないんですよね。学長室でNHKの取材を受けて、「今、大学はなぜオンラインにしているのに授業料を取るんですか」などの質問に答えました(2020年10月26日放送 特集withコロナ生活のモヤモヤにできるだけ答えます)。色々と喋りましたが、面白いところだけ切り取るのね。私はときどき冗談を挟むけど、「ゼミの学生とコンパにもカラオケにもいけないから面白くないですよ」なんてとこだけ放送された。NHKだから国際放送されていて、ロサンゼルスにいるOBからも連絡が来ました。

 その他にも、ここでガウン姿で入学式の挨拶をしたり、ご父母の皆さんにメッセージを発信したり、学長室がオンライン発信のスタジオと化しました。


―ICTなど、コロナ禍での大学での学びについての考えを教えていただきたいなと思います。


福原 オンライン化というのは、今までのリアルを補うだけじゃなくて、リアルに出来なかったことが出来るようになったということだと思います。留学しなくても、オンラインで海外の大学の講義を聞けるようになりました。これからの大学は、オンラインを活用することで、リアルでは成し得なかったグローバル化をはじめ、実に多様なことができます。ICTを活用することで、学びの可能性というのはものすごく広がりました。それを実現する道筋として、この4月から教育力研究開発機構という新しい仕組みが動いています。


―オンライン授業の導入にあたって色々メリットもデメリットも出てきますが、それを共有することについてはどうお考えですか?


福原 お互いに試行錯誤でやった中で未だ整理しきれていませんが、教員はFD研修などの中でメリット・デメリットを共有しています。学生のレポートなどを見たりすると、それによって本当に学習効果が上がっているのかどうかがわかります。他にも、いろいろなアンケートでいま捕捉をしているところです。その成果を、教員同士でまた学生の皆さん同士あるいは教員と学生同士で、これから共有できると思います。


―福原先生が最初に学長に就任されたのが2011年、10年間の大学の変化等を教えてください?


福原 ちょうど2011年も、3.11で入学式や卒業式ができなかった年でした。復興のなかで、学生の災害ボランティアなど、大学が大学の中だけにこもっているのではなく、社会との連携が求められるようになりました。他には、地域や企業や国との共同研究、インターンシップなど、社会の色々なところと手を携え、そしてそこを学生の学びの場にしてきました。

 自分の将来を見て、3・4年生で職業体験をするインターンシップというのは、キャリアインターンシップといいます。そうではなくて、1・2年生が何を大学時代に勉強しておかなきゃならないのかを見るのが、アカデミックインターンシップです。そういったキャリアインターンシップとアカデミックインターンシップの制度を、1回目の学長のときに整備することができました。そのことが実は、University 3.0という世代への取り組みと一致していて、大学の社会連携、大学の社会的役割ということを意識してきました。


 さらに、10年間共通して言えることは、グローバル化の進展です。単なる国際交流ということだけではなくて、グローバル化の本当の意味を、大学にいるときに気が付かないといけません。政治的に、あるいは商業的に、いろいろな意味がグローバル化に含まれますが、やっぱりグローバル化の本質は多様性だと思います。これまで大学は人類の持続的発展を支えてきましたが、その際に、私立大学は様々な建学の精神や独自性で多様性を支えてきました。

 また、グローバルであるためには、自分を知らないといけないですよね。よく私たち教員は、大学とは自分探しの旅であるということを言ってみたりします。一人で部屋にこもっているだけでは、誰だって自分は探せません。友達と接する、今まで知らなかった専門的な分野の先生と接する、グローバルな環境に接する、いろんな挫折を味わう、失敗する、そうやって自分を探していくわけです。だから大学では失敗したっていいんです。ゼミやサークルどなどでは、素っ頓狂な答えして「なに言ってんの、おまえ」なんてお互いに言い合いながら、みんなでワイワイやる方が、力も個性もものすごく伸びるわけです。ただ社会出たらきちんとやる。そんな環境に身を置ける本当の大学というものをずっと作ってきたのが、中央大学です。

 私が最初に学長を就任した直後に、「中長期教学基本構想」をまとめましたが、それらは今の中長期事業計画の基礎になっています。そういう意味では、この10年間のうちに2回学長を務めさせていただいたおかげで、自分の大学像といったものが結構実践できたなと思います。


法学部の都心展開について


福原 中長期事業計画が発表されたときに世間的に大きく注目されたのは、法学部の都心展開です。これは他の大学の都心回帰の傾向と重なってはいますが、都心に行くことが目的そのものではありません。大学と大学院が一体となり、大学3年生から院に行くという新しい法曹養成制度を中央大学が身をもって先導するということが目的です。

 中央大学がいろいろな名声を獲得してきた時期は長らく都心で成果をあげていたので、OB・OGの中には多摩に来たから何かとダメなんだと言う人がいます。しかし、多摩へ来たから大学の規模は膨らみましたし、多摩で獲得した成果というのは実際に大きいのですね。だから都心に行くことが目的ではないし、ノスタルジックなOB・OGの要望に応じるだけのものでもなくて、これもやっぱりさっき言ったみたいに、本学の伝統の大きなひとつである法学教育を時代に即してきちんと一貫して行うという未来指向が大切なのです。

 法学部が移転した場合、こちらに寮があるスポーツ関係で法学部に在籍する人はどうするのか、あるいはサークル活動をどうするのか、FLPをどうするのか。そういった問題は大きいですが、私は1つにはDXを活用することで解決していけると思っています。

 自然科学の後楽園キャンパス、国際情報の市ヶ谷田町キャンパス、法学部の茗荷谷キャンパス、大学院、記念館、人文社会科学の多摩キャンパスと、都心と多摩の両方のよいところを使えるデュアルキャンパス構想を描いています。法学部新キャンパスの準備が着実に進んでいますが、法学部生だけでなく、すべての中大生がメリットを享受できるように考えていますので、ぜひ楽しみにしていてください。


―学長はICTやDXと法律の研究者というふうに伺っています。


福原 私はもともと理系の人間です。自然科学的な発想で法学を見ると、違った理解の仕方ができて理解が人よりも進みました。例えば私が専門にしている会社法とか商法の領域だと、新しい法律は因数分解するとわかりやすいのです。条文を因数分解すると共通の因数となるものがあって、そこには共有のルールがあるのですから、全ての条文を頭に入れなくてもよくなる。考えてみたら、工学部出た人が経済産業省から法務省に行って作った会社法の条文なら、理系の発想で作ったルールです。法令工学や数理法学は面白い。

 法律学者や経済学者って、優れたデータサイエンティストなんですね。判例や法令というデータを、具体的な問題を解決するためにどういうふうに活用していくのか。データサイエンスの教育っていうは、各学部の教育に活かせます。

 私は理系の基礎と発想をもっていたので、電子商取引法・電子決済法といったものに始まり、今は、FinTechビジネス法やDX法を研究しています。社会では日本資金決済業協会会長をしていますが、そこで日本の電子マネー等に関する法律をどういう風に作り変えていくかということを実践的に研究しながら、それをまた「支払決済法」という授業で教えることをしています。私の場合は、大学の中の研究室で研究するというよりは、実社会にどんどん出て行って、実務の中で自分の研究成果を試し生かすことに努めています。それが私の研究スタイルなので、この自分自身の経験がこれからの大学の発展に役立てばいいなというふうに在任中は考えてきました。


―本当にたくさんの役職を務めていらっしゃいますね。


福原 学長を退任したら、1日だけ休んで大学スポーツ協会会長に就任する予定です。私はスポーツが好きでね、長らく硬式野球部長もしていました。

 私はバラエティ系なんです。色々なことを色々な人たちと連携を取って行い、色々な仲間を大事にしていたら、これやりませんか、一緒にやりませんかと、次々とお声がかかります。人間ってやっぱりかけたものしか返ってこないので、職務を重ねていると、そこからまた沢山のものを得ることができます。色々な人間関係を築くことが大切だと思います。


―さらに仕事に対する姿勢というものを伺いたいです。


福原 所詮人間は、自分の為に出す力って限られています。君たちもこれから愛する人ができたときに、その人の為に尽くす方がずっと力が出る。だから仕事をするときに自分の能力を最大限に発揮したいと思うならば、自分のためにするのではなく、自分の立場を支えてくれる、自分の立場と関わってくれる人たちのために仕事をするものなのです。

 学長になったら、福原という個人ではなくて、中央大学の学長としてどう判断して行動するかということを意識しないといけません。やっぱり人間である以上、ある地位に就くと、自分の力を発揮して貢献していきたいという気持ちになります。しかし、それは目立ちたい、人から良く思われたいという個人的利得や欲望と裏腹です。また、大きな立場であればあるほど、多くの人の意見を聞く必要があります。私心を払って、私という立場とそれから公の立場をきちんとわきまえて行動するということが大事だと、長い期間をかけてわかりました。組織のガバナンスということの根底でもあります。

 中央大学の学長は、確かに大変な役職でした。定年まで時間があるのでさらに続けたらどうかというお声もいただきましたが、やはり組織というものは多くの人たちが支えていかなければなりません。私は学長を2回務めましたし、幸い同じ志と希望を持つ方々に引き継ぐことが出来ました。学長は卒業して、また別の立場で大学のためや社会のために貢献する時間を持つことで、中央大学や社会の役に立ちたいと思っています。ありがとうございました。


―福原先生、本日はお忙しいなか、本当にありがとうございました。


記者:田村恵美(法学部3年)、有滝将史(法学部1年)、矢鋪怜央奈(法学部1年)

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