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駆け込み入園 星の王子さまミュージアム

 小学生の時に名作だと聞いて一度読んでみたはいいものの、何をいっているのかわからない。そんな「星の王子さま」という本を、浅学な自分にもう一度開き、考える機会を与えてくれた博物館について紹介する。



 星の王子さまミュージアムは、サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」をテーマにした博物館である。今回、数多くの美術館・博物館が存在する箱根の中で、我々がこの博物館を訪れたのは、コロナ禍での来園者の減少や建物の老朽化により、2023年3月で閉園してしまうという情報を聞きつけてのことであった。


 「川向・星の王子さまミュージアム」停留所でバスを降り、学生証を提示して1,100円のチケットを購入後、敷地に入ると、真っ先に庭園が目に入った。6月になるとアジサイやバラが咲いて、より一層綺麗になるというが、まだ花がほとんど咲いていない3月であっても、その眺めは壮観であった。なぜなら、作者の故郷の城(サン=モーリス・ド・レマンス城)を再現した華やかな展示ホールの建物が背景になっていたからだ。その他にも、昔ながらのヨーロッパの街並みや教会が再現されており、非常に凝った外観をしていた。会員のうちの一人が「この博物館には、ビルが立ち並ぶ都会ではなく、自然に囲まれた箱根の立地がぴったりだ」と言っていたが、自分もその通りだと思った。



 展示ホールの中に入ると、作者がプライベートで乗っていたコードロン・シムーンという飛行機の模型が来園者を出迎えてくれる。赤く光るレトロな機体を見ると、生前パイロットでもあった作者が、作品の語り手同様、子供心を失わずにいたということに納得がいくような気がした。その後、少し奥の方へ向かい、作者の生涯や彼が「星の王子さま」執筆に至った経緯などを簡単にまとめた映像を視聴した。


そこから階段で2階に上がると、作者が幼少期を過ごしたフランスのリヨン、パイロットの赴任先であるアルゼンチン、パリ陥落後の第二次世界大戦時に亡命したニューヨークで実際に暮らしていた部屋の様子が再現されており、作品を生み出すに至った環境を窺い知ることができた。また、彼が書いた手紙やイラストなど、友人や親戚が日本へ寄贈した貴重な資料も閲覧することができた(ただし写真撮影は不可であった)。


 再び1階に降りると、作品の話の流れを、場面ごとに登場人物の像などで再現したものが展示されていた。可愛らしく作品の世界観が表現されており、フォトスポットとなっていた。また、作品をテーマにした料理やグッズを販売するするレストランやミュージアムショップも施設内にあり、「たいせつなものは、目に見えない」と言い、心で感じ、自分で自由に考えることの重要性を説きつつも、視覚に関しても楽しませてくれるミュージアムであると思った。


 残念ながら、この記事が出回る頃にはミュージアムは閉園してしまっているだろうが、作品自体はこの先何十年何百年も、我々が生きていく上で大切なことを伝え続けてくれるはずである。だから、自分のように昔読んだきり放置しているという人も、そもそも読んだことがないという人も、是非、この本のページをめくり、抽象的な表現についてじっくりと意味を考えてみてほしい。(高松)

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