アンプから響く軽音のデスボイス、ギター、歓声…。文化祭独特の喧騒から逃れた、ステージの向こう側に8号館は位置する。その2階の半円状の階段教室で、ひっそりとアニメーション映画が放映されていた。中央大学アニメーション研究会(以下、アニ研)では毎年、15分ほどの映画を製作しており、今年は今年度作品『CINEMA』と共に過去作品を上映している。古いものだと1985年のものもあるそうだ。

「4号館の不夜城と言われていましたね。」
白門祭前日まで、アニ研の会室は灯りが消えることは無かった。その中では、部員が缶詰で編集作業をしていたそうだ。アニ研の代表・TAPPY氏は、自身のサークル室について触れつつ語ってくれた。
―作品はいつごろから作り始めたのですか?
6月頃から動き出しました。このタイミングはかなりギリギリで、正直「間に合うか?」という話になっていました。6月からプロットを作りはじめ、7月に脚本が完成しました。月末までにコンテ(記者注:脚本で記したストーリーに絵やセリフをつけて分かりやすくしたもの)を作って、そこから本格的に製作開始です。
―声優はどうされたのですか?
今まではアナウンス研究会の人に頼んでいたのですが、今回は外注です。吹き込みが早くてとても助かりました。
―特に苦労したことはありますか?
アニメーション映画は、画面が変わるごとの「画面カット」のほかに、「中割り」と言ってキャラクターや背景が滑らかに動くためにカットの間に挟む絵も描きます。さらに、キャラクターだけが動く「セル画」を重ねます。中割りが100画を超えることもありました。なので、コンピューターのファイルがとても重くなって大変でした。
また、撮影処理という作業があります。これは、出来たアニメーションをさらに見栄え良くするために光を入れたりエフェクトを付けたりするものです。この作業は正直キリがありません。実は、これがギリギリまでかかってしまい、一日目の上映開始5分前にやっと完成しました。

―そこまでギリギリだとは…。最後に、本企画のアピールポイントを教えてください。
映画中に炎が燃え上がるシーンの作成は特に頑張りました。受付では作品キャラクターのステッカーも配布しています。また、作画途中の絵の展示もしてあります。ぜひ来てください!
実のところ、私自身、学生の作品だということであまり期待せずに本企画を見に行った。しかし、10分強という短い時間ながら脚本家の作品に対するこだわりが随所に見受けられた。この作品を深く堪能するには何度も足を運んでみるのがいいかもしれない。また、音楽の挿入のタイミングや視点の切り替えといった演出が特に神がかっていて、とても素人の作品とは思えなかった。ぜひタイムテーブルを見たうえで自分の目で確認してみてほしい。

取材協力:
中央大学アニメーション研究会
会長 TAPPY氏
『CINEMA』監督・脚本 あら町氏
(小武海 瞳)
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