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「はじめての京劇」―張春祥氏へインタビュー―

 今年は1972年の日中国交正常化からちょうど50周年にあたる。この歴史的な50周年の節目に際し、11月7日(月)、文学部中国言語文化専攻では中国文化を紹介するイベントとして「はじめての京劇」をフォレスト・ゲートウェイ3Fホールにて開催した。「はじめての京劇」では、ゲスト講師として新潮劇院/一般財団法人日本京劇振興協会より、代表理事を務める張春祥氏と常務理事を務める張烏梅氏を招き、さらに中央大学文学部中国言語文化専攻に在籍しながら、新潮劇院の劇団員としても活躍中の小林孝徳氏も交え、京劇についてのレクチャーとパフォーマンスを行った。


左から張春祥氏、小林孝徳氏、張烏梅氏

 今回、中央大学新聞学会はゲスト講師の張春祥氏に取材を行った。当記事では京劇の紹介とともに、京劇の普及に微力ながらも貢献出来ればと思う。


 そもそも京劇とは、中国を代表する伝統芸能であり、張烏梅氏は「中国文化はこれを無しに語る事は出来ない」という。しかしながら日本において京劇を知っている人はそう多くはないのではないだろうか。そこで、北京のオペラとも称される京劇の歴史や特徴について講演会の内容を踏まえた上で少し解説したいと思う。


 その成立は200年ほど前の清代にまで遡る。安徽省からやってきた劇団が、北京で行われた乾隆帝の生誕80周年祝賀にて大変に好評を博した。結果そのまま定着、そして北京の言葉や文化風俗の習慣などに影響されながら、少しずつ京劇の様式が確立されていった。北京で発展したため京の名が付いたという訳だ。

 特徴としては豪華絢爛な衣装と派手なメイク、そして何よりセリフや唱(うた)、立ち回りなどが挙げられる。舞台上での姿勢や歩き方、指先の動きに至るまで身体の動かし方の全てには様式があり、俳優たちは皆幼い頃からひたすらに練習を繰り返してそれらを身体に染み込ませてゆくのだ。また、派手なメイクの役割というのは俳優の個性を消すためであり、演じる“役”の性格を落とし込むために行う。つまり、衣装とメイクを見れば、その人物が一体どのような性格であるのかが分かるようになっている。また、京劇に大掛かりな舞台装置は無く、あったとしても机1つと椅子2つだけのため、やはり俳優の表現力がとても重要となる。


「三岔口」でのワンシーン

 そして本講演会では、演目「三岔口(サンチャコウ)」の冒頭シーンをゲスト講師の張春祥氏により披露していただいた。袖の長い衣装を身にまとった張春祥氏演じる任堂恵が、アクロバティックに舞う姿には迫力があり圧巻であった。表現力も凄まじく、大きく目を見開いて客席を睨み付けた際の表情には思わず心臓が止まるかと思った程である。積み上げられた技術には感服するばかりであり、これが生で観られた事はとても貴重な経験であった。





以下はゲスト講師の張春祥氏へのインタビューである。(聞き手:江崎、板谷)



――日本に来たきっかけ、理由はなんですか?


 来日したきっかけは1989年に起きた天安門事件でした。最初は一時的な避難に過ぎない日本訪問のつもりだったんです。でも日本に滞在していたある日、演出家である佐藤信さんに京劇の監督を依頼され、本当に軽い気持ちでこれを引き受けました。そうしたら次々と仕事の依頼が舞い込んできて、日本に留まることになりました。しばらくして日本での仕事が一段落したので、北京に帰ったらこう言われたんです。「もっと遊んでていいよ。」って。この一言で私は再び来日し、どんどん日本にハマっていきました。そして日本で結婚して、家族が出来たことが大きな理由となって日本をメインとして活動するようになりました。そうして新潮劇院を設立したんです。



――メイクや衣装にかける時間はどのくらいなのですか?


 個人差や演じる役による差はあるけれど、大体はメイクに40分、衣装を着るのに20分の合計1時間ぐらいかな。なかでも、浄(ジン)と呼ばれる隈取役はメイクが特に時間がかかります。衣装に最も時間をかけるのは女性役の旦(ダン)です。髪飾りがいっぱいあって大変ですからね。



――職業病みたいなものはありますか?


 歩き方だったり物を拾うためにしゃがむ姿勢だったり、いろんな動きが何となく京劇っぽくなることはありますね。無意識なんですけどね。あとこれは職業病では無いかもしれないけれど、腰とか膝とか股関節だとか、体の節々がよく痛むんだよ……。昔は色々ムリしても全然気にならなかったのに、今はちょっともう厳しいね……。



――今年は日中国交正常化50周年の節目ですが、何か思う事はありますか?


 正直、日本と中国にある政治的な交流はよく分かりません。ただ一つ確信を持って言えるのは、文化の交流は絶やしてはいけないということです。世の中には色々な人がいるけれど、文化や芸術にはそれを超えていく力があります。欠かせないものなんです。だからこそ、文化交流は必要だし、京劇のような伝統芸能は残してゆく必要があるんです。地理的にも日本と中国は離れることが出来ないのだから、これからももっと仲良くして欲しいです。



――これからの目標や伝えたいメッセージがあれば教えてください。


 日本での京劇の知名度は未だに低いのが現状です。目標は京劇をもっと普及させ、大きな劇場で沢山の人の前で京劇をやることです。時間はかかると思うけど、頑張ります!

 学生には未来・希望があるから、今回のイベントで学生に京劇のことを知ってもらえて嬉しいし、これを機に、さらに京劇が広まってくれたらと思います!



――張さん、本日はお忙しいなか、本当にありがとうございました。


(板谷)









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