中央大学教職員を代表し、新入生の皆さんが大学各学部と大学院各研究科への進学のために重ねられた努力を讃えますとともに、本学への入学をお祝い申し上げ、心から歓迎いたします。
中央大学は1885年に「英吉利法律学校」として創立されて以来、「實地應用ノ素ヲ養フ」という建学の精神のもとに、139年の歴史と白門を象徴とする伝統と実績を築き、いつの時代にも社会を支え、未来を拓く人材を育成し、社会に貢献することを使命として参りました。学問や研究は、実社会とそこに生きる人々に無縁ではなく、現実事象から課題を発見し、理論を還元するといった形で、社会の営みとの相互作用により発展すべきであり、常に時代とともにあり、社会の変化に適合するよう進化します。「實地應用ノ素ヲ養フ」は、このような学問研究の姿勢に根ざす教育観を表したものです。したがって「素」とは社会に応用できる力の素地であり、「素ヲ養フ」とは知識はもとより、さまざまな体験や人との交流の中で培われるコミュニケーション力や議論する力、組織的な判断力、そして弛まず学び続ける力の涵養にほかなりません。
さて、「中央大学中長期事業計画 Chuo Vision 2025」のもと進められてきた改革により、2023年度、本学は茗荷谷キャンパス(文京区)を開設し、法学部・大学院法学研究科が多摩キャンパスから移転しました。大学院国際情報研究科が開設された市ヶ谷田町キャンパスと後楽園、駿河台の各キャンパスを合わせた都心キャンパス群において知の集積をはかります。
現代社会における事象や課題が非常に複雑化していることから、いま大学には、持続可能な社会基盤構築のための学際的研究教育の拡充、特に科学技術と人間行動・社会行動の関係性に着目した文理横断型の研究教育が強く求められています。このような社会からの負託に応えるために、学部の枠を超えて学際的教育を提供する2021年度から全学部生を対象に「AI・データサイエンス全学プログラム」を設置し、2023年度より、文理横断型共同開講科目の「学問最前線」を開講しています。この科目は、法学部(茗荷谷キャンパス)と、理工学部(後楽園キャンパス)、国際情報学部(市ヶ谷田町キャンパス)の都心3学部共同によるもので、文系と理系を問わず、幅広い視野や深い思考の礎となる素質を身につけることができます。
また、このような研究教育の拡充だけにとどまらず、本学での新しい出会いと生活が、皆さんの輝かしい未来の礎となるよう、さまざまなことに挑戦する機会を提供したいと考えています。緑豊かで広大な多摩キャンパス、スカイツリーや東京ドームを見晴らすことのできる後楽園キャンパス、桜の咲く外堀通りの市ヶ谷田町キャンパス、2023年度から開設された茗荷谷キャンパスや本学伝統の地に生まれ変わった駿河台キャンパス。本学が誇るそれぞれのキャンパスで学ぶ皆さんには、その環境と本学のネットワークを存分に活用して、大いに学業に励み、学術・文化・芸術・スポーツ・ボランティア等の諸活動に参加して、未来社会を生きる礎を築きつつ、大きな成長を遂げられることを期待いたします。本学では学生中心の素晴らしい活動が盛んに行われており、それに支えられた誇るべき大学力があります。それは、キャンパスという空間を活用して、また、教職員、ご父母、OBOG、社会・地域等との連携によって、実り豊かに形成されています。それらの機会こそ、本学の歴史と伝統を築き、未来を拓く貴重な礎であると言っても過言ではありません。
今日の社会基盤や産業構造の激しい変化は、物事を見るアングルを固定化できないほど加速しています。また、多様化の時代を迎え、私たち人類は、従事する当面の仕事や得意分野にこだわらず、異分野との融合、そして、まったく新しい人間関係や組織間の有機的相互関係をもって、新たな世界を共創していく時代に直面しています。これから本学で学び、学生生活から得る成果を、新たな世界に価値あるものとして実装できるよう心掛けてみてください。そのことこそが本学のユニバーシティメッセージである「行動する知性。」を、ご自身によって体現することになるからです。
大学に必要なことは、学生の皆さんが志や夢を持ち続けることを可能にする学修支援体制を充実させ、環境を整備することです。本学はこの点に常に注力しています。しかし、自分の知識やスキルが社会に役立っていると自覚するには、卒業後も弛まず学び続ける必要があります。他大学にはない中央大学の特徴的で面倒見の良い教育を通して得る「学ぶ姿勢」や「チャレンジする精神」は、卒業後も長く自分のものとして継続されると信じています。希望と志をもって学修に励む皆さんを、私たち中央大学の教職員一同は精一杯、応援します。在学中に巡り合うさまざまな人間関係を大切にし、実りある学生生活を元気に送られることを期待いたします。
新入生の皆さんのご健康とご活躍を心から祈念して、お祝いと歓迎のご挨拶といたします。
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