私は今回、11月29日に行われた「林家つる子独演会」を取材した。
林家つる子氏は群馬県高崎市出身で、中央大学文学部中国言語文化専攻の卒業生である。大学時代は落語研究会に所属しており「中央亭可愛」という高座名で活動していた。つる子氏は女性初の抜擢昇格で来春真打になることが決まっている。つる子氏の落語は、男性が主人公であることが多い古典落語を、女性の視点から語り直す試みで評価されている。

独演会はまず、つる子氏と同じ中国言語文化専攻4年生の信田慶太氏が前座を務めてくれた。信田氏は中央大学落語研究会で「あたり家中華」という高座名で活動している。ちなみに高座名は、自身が中国言語文化専攻に所属していることに由来するそうだ。前座では、林家つる子氏の魅力や落語の楽しみ方を面白おかしく紹介してくれた。
あたり家中華氏の前座で盛り上がった会場に満を持して登場したつる子氏。まず自身と落語について語ってくれた。つる子氏と落語の出会いは、新歓時期、中央大学落語研究会から勧誘を受けたことだったそうだ。元々高校時代に演劇をしていたつる子氏。落語研究会の活動を見学し、落語を初めてみて、江戸時代に生まれた噺を今聞いても笑える、感動できることに感銘を受け、また、1人ですべての演出を行う落語の魅力に気づき、のめり込んだ。中国言語文化専攻なのに中国語の勉強が疎かになってしまったほどだという。また、つる子氏は幼い頃に見た「らんま1/2」から中国語に興味を持ち、中央大学の中国言語文化専攻への進学を決めたと語った。興味のあることにまっすぐな、つる子氏の人柄がよく伝わるエピソードだった。つる子氏がプロの落語家を目指す際、現在中央大学落語研究会の顧問である、総合政策学部の黒田絵美子先生が相談に乗ってくださった。黒田先生との出会いから様々なご縁を通じて、現在の落語家としての自分が在ると語った。
つる子氏の紹介はこのくらいにして、噺(はなし)について触れていこう。つる子氏はまず、林家正蔵師匠から初めて習った噺を披露してくれた。とても短い噺だったが、そこには落ち下げを語ることや上下(かみしも)を切るといった、落語の原点が詰まっていると語ってくれた。独演会のメインとなった落語「紺屋髙尾」は、吉原の遊郭の遊女高尾大夫と紺屋町の染物屋久蔵が主人公の物語であった。噺が始まった途端に会場の雰囲気は一変し、会場にはいる人々全員がつる子氏の語りに引き込まれた。噺では登場人物が数人出てきたが、上下を見事に使い分けて表現していた。また会場が笑いに包まれる時もあり、とても楽しい空間だった。
読者の皆さんも、ぜひ林家つる子氏の落語を聞きに訪れてみてほしい。(松村)
☆真打昇進披露興行日程は林家つる子ホームページから
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