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執筆者の写真中央大学新聞

留学体験記 オーストラリア・ブリスベンでのひと月を経て

 以前から海外で過ごすことに強い憧れがあり、春期休暇を利用してオーストラリアのブリスベンに1か月の短期留学をした。中央大学では、年中を通して海外留学や海外インターンシップの募集がされているが、今回はそれらを利用せず、個人でエージェントに依頼して留学した。大学のプログラムで留学した場合、参加者十数名がまとめて留学へ向かうことがほとんどであり、何かトラブルが発生したとしても誰かに頼ることが可能だ。しかし、個人留学の場合はそうはいかない。私は無事にたどり着けるのか、出国の手続きは正しかったのか、など強い不安に襲われながら日本を発った。 

 

 9時間のフライトを経てオーストラリアに到着した後、すぐにホームステイ先の家へと向かった。長期留学の場合、学生寮に住むこともできるが、短期留学の場合はホームステイすることがほとんどである。ホストファザーの方に出迎えてもらい、英語での会話を試みた。しかしながら、相手が何を言っているのかほとんど聞き取ることが出来ない。もちろん私自身の英語力の低さが原因であるが、そもそも会話のスピードが遥かに速い。それに加えて発音のクセが非常に強く、聞きなれない言い回しや表現がかなりの頻度で出てくる。また、こちらが英語を喋ろうとしても、緊張のあまり初歩的な単語や文法すら出てこず、単語ばかりを羅列してまるできれいな英文にならず、発音もカタコトになってしまう。「日本で英語を喋れるようにはならない」という主張をたびたび耳にするが、まさにその通りだと思う。日本で聞く英語は、発音が明瞭で文法もしっかりした、いわば日本人向けにチューンされた英語であり、実際に使われる英語とはまるきし違う。留学してしばらくの間、まともにコミュニケーションをとることもままならず自己嫌悪に陥り、留学に来たことを後悔していた。 

 

 しかし悪戦苦闘しながら生活する中で、私の中の英語への認識が徐々に変わっていった。当初、私は英語を「文法や発音が正しくなければ伝わらないものだ」「単語がわからなくて目の前で調べるような行為はみっともない」と思い込んでいた。しかし、実際に暮らす中で正しい英語を使う必要など全くない。単語ばかりを並べた拙い文章でも、言いたいことは伝わるのである。何か商品を探しているのであれば、店員に写真を見せながら「これはどこ?」と聞けば教えてくれる。聞き取れなかったら、もう一度ゆっくり言ってもらうようにお願いすればいい。わからない単語があれば目の前で堂々と調べていいのである。誰もそれを咎めないし、不審な目で見たりはしない。私がそのことに気づいてから、私は英語を喋ることに抵抗がなくなった。文法が正しくないかもと躊躇っていた表現を使ってみたり、ホストファザーと会話するときにその日語学学校で習った文法を意図的に使ってみたり、レストランで注文するときに、ほかの客の注文の言い回しを真似してみるなど、とにかくいろいろな英語を試してみた。試行錯誤を繰り返すなかで、だんだんと使える単語や文法のレパートリーが増えていき、会話を楽しめるようになっていた。 

 ブリスベンが小さい都市ということもあり、博物館や動物園、絶景スポットなどほとんどの観光スポットに訪れることが出来た。ホストファミリーの方とも仲良くなり、言語学校でも外人の友達を作ることが出来るなど、たった一か月で多くの経験を積み、留学を満喫することが出来た。留学には高いハードルがあるように思えるが、実際には向き合えばどうとでもなることがほとんどだ。大学生の長い休暇を生かし、短期でも留学に行くことをおすすめしたい。(原) 

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