中央大学法学部は、来たる 2023年度に文京区茗荷 谷へのキャンパス移転を控 えている。千代田区駿河台 から移転した1978年以 来使用されてきた八王子市 の多摩キャンパスは都内で も郊外に位置し、周辺が森 林および住宅街であること も相まって学生が遊興に走 らず勉学に集中できる環境 であるとの指摘もあるが、 利便性には難があることは 否定しえなかった。そのような中で法学部は利便性改 善や外部との連携による講義の質の向上を狙いとし、 茗荷谷への移転という形で 都心回帰を行うこととなっ た。キャンパスの移転にあ たっては学生の獲得競争が背景に存在するが、学生の 行動範囲が従来から拡大す ることもあり就職活動等に も好影響が見込まれ、さら には2023年の箱根駅伝 で中央大学が準優勝したこ ともあり、法学部の志願者 は増加するかと思われた。
しかし、中央大学のホームページによれば、2023 年の法学部志願者数は全体 で12008人と、202 2年の11051人こそ上 回ったものの2020年の 15895人、2021年 の14953人からはむしろ下落する格好となった。
では、何故志願者数は下落 したのであろうか。その要 因について調査してみると、 少子化に伴う大学受験生全 体の減少や定員厳格化、そ して長引くコロナ禍の影響 が背後に浮かび上がり、問 題の根本が法学部だけに留 まらないことが明らかにな った。これらが原因で受験 生は以前にも増して大学の 利便性を重視するようにな り 、多摩キャンパスを中心に展開する中央大学よりも都心部でキャンパスを展開 する大学を好んだ、という 心理が働いたことが影響し ていると考えられている。 さらに、中央大学はキャン パス移転発表以後、全学部 において英語外部試験利
用方式や共通テスト併 用方式の受験料を190 00円から35000円に 値上げし、複数方式の出願に際して受験料が据え置かれず追加で15000円の受験料を支払う必要があるという、所謂「併願割引」の縮小策も行っている。それまで よりも受験にかかる費用が割高となったことで志願者数は減り、特に共通テスト方式では2022年に中央大学全体で前年度比58%、志願者数にして1万人以上の減少が見られる結果となった。加えて―これは中央
大学に限った話ではないが ―共通テスト難化による共通テスト利用出願者自体の減少もそれに拍車をかけた模様である。
キャンパスの都心移転は学生と大学の双方にメリットがあるのは確かだが、それだけで学生の誘致に繋がるとは限らないということがこの結果から示されたとも言える。中央大学法学部の 今後の発展のためにも、受験生の周辺事情に寄り添う入試改革を期待したい。
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